風俗営業1号許可(接待飲食等営業)は、キャバクラ・ホストクラブ・スナック等、接待を伴って客に飲食させる営業を適法に行うために必要な許可です。
許可の要否は、店舗の名称や業態の呼称によって決まるものではなく、接待行為の実態があるかどうかによって判断されます。つまり、ガールズバーだから許可はいらない、というようなものではなく、ガールズバーでも接待行為を行っていれば許可は必要です。これを取得せずに営業を行った場合、無許可営業と判断されます。
また、2025年6月28日施行の改正風営法により罰則が大幅に引き上げられ、同年11月28日施行の改正では欠格事由が拡大されました。無許可営業の発覚は経営者個人のみならずグループ会社全体に深刻な影響を及ぼし得る時代となっており、開業前の段階で正確な法的理解をもって準備を進めることが不可欠です。
風俗営業1号許可の法的位置づけ
風俗営業1号許可とは、風営法第2条第1項第1号に規定される「接待をして客に飲食をさせる営業」を行うために、都道府県公安委員会から取得しなければならない許可です。
許可の要否を決定する中心的な要素は接待の有無であり、アルコールを提供するかどうかは関係しません。ノンアルコールの飲料のみを提供していても接待行為があれば1号許可が必要となり、逆にアルコールを提供していても接待行為がなければ1号許可の対象にはなりません。
「接待」の法的定義と判断基準
(1)条文上の定義
風営法第2条第3項は、「接待」を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。この定義は抽象的であるため、実務上の判断は警察庁の解釈運用基準に基づいて行われます。
(2)判断の三つの軸
警察庁の解釈運用基準を踏まえると、接待該当性の判断軸は以下の三点に整理されます。
- 特定少数の客に対する行為であること
- 飲食に通常付随する範囲を超える積極的なサービスであること
- 営業の客観的実態によって判断されること(店側の意図・認識は判断に影響しない)
「接待をしているつもりはない」という主張は、法的判断において考慮されません。また、カウンター越しの接客形態であることも、接待該当性を否定する根拠にはなりません。
(3)接待に該当する行為
以下の行為は、解釈運用基準上、接待と評価されやすいとされています。
- 特定の客のそばにはべり、継続して談笑の相手となること
- 特定の客に継続してお酌をすること
- カラオケにおけるデュエット・手拍子・褒めはやし
- 客とのゲーム・遊戯への参加
- 客の身体への接触を伴うサービス
(4)接待に該当しない行為
注文を受けて飲食物を提供する行為や配膳のみを行う行為は、一般的な飲食店の接客の範囲であり、接待には該当しません。ただし、飲食物の提供後にその客のそばにとどまり継続して談笑の相手となれば、行為の連続性から接待と評価されます。
風俗営業1号許可・深夜酒類提供飲食店営業・特定遊興飲食店営業の区分
開業にあたって最も混乱が生じやすいのが、この三つの区分の選択です。
| 営業スタイル | 必要な手続き | 深夜営業 | 接待 | 遊興 |
|---|---|---|---|---|
| 接待あり・深夜不可 | 風俗営業1号許可 | 原則不可 | 可 | − |
| 深夜あり・接待なし | 深夜酒類提供飲食店営業届出 | 可 | 不可 | − |
| 深夜×遊興(クラブ等) | 特定遊興飲食店営業許可 | 可 | − | 可 |
風俗営業1号許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出は、同一店舗において原則として併用できません。よって、「深夜も営業したい」「接待も行いたい」という要望を同時に実現することは原則として認められず、いずれを営業の柱に置くかを開業準備の初期段階で決定することが不可欠です。
1号許可の主な要件
(1)場所的要件
風俗営業1号許可が認められるためには、以下の場所的要件を満たす必要があります。
- 用途地域:商業地域・近隣商業地域等、風俗営業が認められる用途地域内であること
- 保護対象施設との距離:学校・病院・図書館・児童福祉施設等から、都道府県条例で定める距離以上離れていること
これらの要件は物件の立地によって決まるため、物件契約前に確認することが絶対条件です。契約後に要件を満たさないことが判明しても、物件の変更は原則として困難であり、賃料の損失が生じます。
(2)人的要件(欠格事由)
申請者(法人の場合は役員全員)が、風営法第4条第1項所定の欠格事由に該当しないことが必要です。主な欠格事由の例は以下のとおりです。
- 一定の刑罰歴(対象罪種による拘禁刑・罰金)を受け、執行終了等から5年を経過していない者
- 暴力団関係者またはその支配下にある者
- 過去に風俗営業許可を取り消され、取消しから5年を経過していない者
さらに、2025年11月28日施行の改正により、以下が欠格事由として新たに追加されました。
- 密接な関係を有する法人(親会社・子会社・兄弟会社等)が過去5年以内に許可を取り消されている場合(第7号)
- 行政処分回避を目的として許可証を返納した場合(第8号)
- 聴聞期日公示後または立入調査後に合併・分割によって処分を逃れた法人の関係者(第9号・第10号)
これにより、処分前に店を閉め、別法人で再開するという従来の対応策(処分逃れ)が封じられました。グループ企業の1社が取消処分を受ければ、関連会社全体が5年間新規許可を取得できないリスクが生じています。
(3)構造・設備要件
営業所の構造・設備については、風営法施行規則に具体的な数値基準が定められています。
| 項目 | 1号許可(接待飲食) | 深夜酒類届出 |
|---|---|---|
| 客室床面積 | 和風客室:9.5㎡以上/その他:16.5㎡以上(1室のみの場合は例外あり) | 9.5㎡以上(1室のみの場合は例外あり) |
| 照度 | 5ルクス以上 | 20ルクス以上 |
| 見通し | 客室内部が外部から見通せる構造(個室は原則不可) | 同左 |
| 騒音・振動 | 条例基準以下 | 同左 |
照度については、1号許可の基準は5ルクス以上であり、深夜酒類届出の20ルクス以上とは異なります。「接待あり=暗くてよい」という誤解が見られますが、5ルクスを下回れば法律違反となります。
内装設計における実務上の落とし穴
(1)申請図面と実態の乖離
図面上「控室」「バックヤード」と記載したスペースを実際の運用では客席として使用するケースがあります。申請書類の記載内容と実際の使用状況が乖離していると、問題となりますので、申請書類と実態は必ず一致させる必要があります。
(2)見通しを妨げる設備の後付け
許可取得後に仕切り・パーテーション・目隠しフィルム等を設置することで、客室内部の見通しに関する構造基準に抵触する場合があります。高さ1メートルを超える間仕切りの取り扱いには特に注意が必要であり、内装変更の前に事前確認が不可欠です。
(3)調光設備の問題
照度基準は営業中の実測値のみで判断されるのではなく、照度を基準値以下に下げられる設備が存在すること自体が問題視される場合があります。スライダックスや調光スイッチにより5ルクス未満に設定できる状態の設備は、通常営業時に基準を満たしていても指摘を受ける可能性があるため、原則として撤去することが求められます。
2025年改正による罰則の強化
2025年6月28日施行の改正により、無許可営業に対する罰則が以下のとおり大幅に引き上げられました。
| 区分 | 改正前 | 改正後(2025年6月28日〜) |
|---|---|---|
| 個人 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金 | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 |
| 法人 | 200万円以下の罰金 | 3億円以下の罰金 |
許可取得後の遵守事項
1号許可を取得した後も、風営法上の遵守事項および禁止行為の適法な管理が継続的に求められます。主な遵守事項・禁止行為は以下のとおりです。
遵守事項として、料金の明示・虚偽説明の禁止、恋愛感情に乗じた不当な金銭要求の禁止、注文を受けていない飲食物の提供禁止等が定められています。
禁止行為として、威迫・困惑させての支払要求、支払のために売春・性風俗営業への就業・AV出演等を要求する行為等が明定されています。
「許可を取得したから安心」ではなく、開業後も継続的なコンプライアンス管理が求められます。
まとめ
風俗営業1号許可の要否は、店舗の外観・名称・業態の呼称ではなく、接客の実態によって決まります。開業準備の段階で以下の事項を順に確認することが、適法な開業への最短経路となります。
- 接待行為の有無を客観的に判断する
- 用途地域と保護対象施設との距離を物件契約前に確認する
- 申請者・役員全員の欠格事由の有無を精査する
- 構造・設備要件を設計段階から確認する
- 許可取得後の遵守事項を継続的に管理する体制を整える
判断に迷う場合は、物件を決める前の段階で行政書士に相談することが、余計なコストと法的リスクを回避するための最も合理的な選択です。
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