デリヘルの事務所・待機所・受付所の違いとは?
デリバリーヘルス(風営法上の無店舗型性風俗特殊営業)の開業や店舗の増設を検討する際、必ずといってよいほど混乱が生じるのが、「事務所」「待機所」「受付所」という三つの言葉の違いです。
これらは、いずれも届出書類や実務の会話に頻繁に登場する用語ですが、その意味や法的な位置づけは同じではありません。この違いを曖昧なまま理解していると、物件選定や運営の段階で、思わぬ法令違反に直結します。
無店舗型デリヘルは「店舗を持たないから簡単」と言われがちですが、正確には「客と対面する場所を持たない営業」です。この前提を外した瞬間に、事務所や待機所は一気にリスクの高い場所へと変わります。
本コラムでは、「事務所」「待機所」「受付所」という三つの施設について、何が必須で、何が任意なのか、そしてどこからが違法になるのかを、実務の流れに沿って整理していきます。
「事務所」とは何か
まず押さえておくべきなのは、無店舗型性風俗特殊営業の届出において、法律上必ず必要になる施設は「事務所」だけだという点です。
事務所とは、営業の本拠地となる場所のことで、ここで経営管理や顧客からの予約受付、従業員の管理などの業務全般を行います。風営法に基づく届出書には、必ずこの事務所の所在地を記載しなければなりません。
事務所の重要な特徴は、営業許可における「届出営業所」として公安委員会に登録される点です。つまり、事務所は単なる業務拠点ではなく、法的に営業所として認められた場所であり、警察による立入検査の対象にもなります。そのため、事務所として届け出る物件については、賃貸借契約書の用途欄が「事務所使用可」となっていることが必須条件です。住居専用マンションなどでは届出が受理されない可能性が高いため、物件選びの段階から注意が必要です。
場所の制限は?
なお、無店舗型営業であるため、事務所の所在地自体には、店舗型性風俗特殊営業に課されるような禁止区域の規制はありません。この点が、後に出てくる「受付所」との決定的な違いになります。
「待機所」とは
次に、多くの方が悩むのが「待機所」です。
待機所とは、キャストが出勤し、顧客からの派遣要請を待つための場所を指します。無店舗型デリヘルでは、事務所とは別に待機所を設けることも、同一の場所に併設することも可能です。
ここで重要なのは、待機所はあくまで「従業員のための場所」であって、営業の対外的な窓口ではない、という点です。
客と接触することを前提とした施設ではありません。
法令上、待機所にも特別な場所的制限はありません。ただし、待機所を設ける場合には、その所在地を届出書に記載し、物件所有者からの使用承諾を得る必要があります。ここで注意すべきなのは、管理会社ではなく所有者本人の承諾が求められる点です。
場所の制限は?
待機所は、事務所同様、場所の制限は特にありません。
しかし、実務上、待機所で最も問題になりやすいのは、近隣トラブルです。送迎車の出入りや深夜早朝の人の動きは想像以上に目立ちやすく、住民や管理組合からの通報をきっかけに、警察の確認が入るケースも少なくありません。理論上は「場所の制限がない」待機所であっても、実際に安定して使える物件はごく限られます。
事務所と待機所は分けるべきか
事務所と待機所を別にしなければならない、という決まりはありません。
小規模な運営であれば、コストを抑えるために併設するケースも多く見られますし、営業規模が大きくなれば、管理しやすい場所に事務所を、キャストが通いやすい場所に待機所を設けるという選択も現実的です。
重要なのは「分けるかどうか」ではなく、「どちらの場所でも客と対面しない」という原則を徹底できているかどうかです。
「受付所」とは
最後に、「受付所」とは、客と直接対面して申込み・説明・料金授受等の営業行為が行われる場所を意味します。
これは実質的な対面営業であり、店舗型性風俗特殊営業における営業所の典型的な形態です。ちなみに、平成17年の風営法改正以降、受付所での営業には、店舗型営業と同様の規制が適用されるようになりました。
つまり、受付所は「客を迎え入れる場所」として扱われ、立地規制や営業時間規制の対象となります。
無店舗型デリヘルで受付所は設置できるのか
結論として、無店舗型デリヘルが新たに受付所を設置することは、実務上ほぼ不可能です。
制度上、無店舗型営業が受付所を全面的に禁止されているわけではありません。しかし、受付所には店舗型営業と同様に、学校や図書館などの周囲一定距離内では設置できないといった規制が、都道府県条例によって課されています。
都市部ではこれらの禁止区域を完全に避けることが現実的に困難であり、結果として届出確認書が交付されないケースが大半を占めます。
このため、無店舗型デリヘルでは受付所を設けず、顧客との接点を電話やウェブサイトといった非対面手段に限定する運営が一般的となっています。
「届出をしなければ問題にならない」は通用しない
しばしば耳にする誤解が、「受付所として届け出なければ、待機所や事務所で客に会っても大丈夫ではないか」という考え方です。
これは完全な誤りであり、違法行為です。
風営法の運用では、名称や届出の有無ではなく、「その場所で何が行われているか」という実態で判断されます。
事務所や待機所であっても、客と対面し、申込みや料金説明を行った時点で、その場所は受付所、あるいは無届の店舗型営業と評価されるリスクを負います。
条例とネット表記も無視できない
受付所に関する規制は、風営法の条文だけで完結しません。
実際には、各都道府県条例によって、禁止区域や営業時間が細かく定められています。そのため、設置可能性を判断するには、管轄警察署と条例の最新運用を確認することが不可欠です。
また近年では、現地の実態だけでなく、ウェブサイトやSNSの表記も判断材料になります。
住所やビル名の掲載、来店を想起させる表現、地図サービス上での店舗表示などは、「客を受け入れる意思がある」と評価され、受付所の存在を推認される要素になり得ます。
まとめ|3つの施設の違い
デリヘルなどの派遣型風俗店(無店舗型性風俗特殊営業)は、確かに店舗型に比べれば場所の制約は緩やかです。
しかしそれは、「何をしてもいい」という意味ではありません。
無店舗型とは、客と対面する場所を持たないことを前提とした営業形態です。
この前提を理解せずに運営すると、事務所や待機所は簡単に「受付所」と評価され、重大な法令違反に直結します。
初めて開業を検討する方ほど、「事務所」「待機所」「受付所」の違いを、言葉ではなく機能とリスクで理解することが重要です。
それが、事故らずに長く営業を続けるための、最初の分岐点になります。
| 施設 | 必須性 | 主な用途 | 場所の制限 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 事務所 | 必須 | 営業の拠点、電話受付、管理業務 | なし | 使用承諾書が取れる物件でのみ届出可能 |
| 待機所 | 任意 | キャストの待機・休憩 | なし | 使用承諾書が取れる物件でのみ届出可能 |
| 受付所 | 任意(実質的に設置困難) | 客との対面受付 | あり(禁止区域規制) | こっそり対面したら無届営業で重罪 |
無店舗型デリヘルは、書類上はシンプルに見えても、実務では「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか」が非常に分かりづらい営業形態です。
特に、事務所・待機所・受付所の扱いを一度でも誤ると、後から修正が効かず、営業停止や物件のやり直しにつながるケースも少なくありません。
「この物件は本当に事務所として使えるのか」
「待機所の運用は問題ないか」
「今の広告表記は受付所と見なされないか」
こうした点に一つでも不安がある場合は、開業前・変更前の段階で行政書士に確認しておくことが、結果的に最も安全で、コストのかからない選択になります。
無料相談のご案内
当事務所では、仙台市・宮城県全域を中心にデリバリーヘルス(無店舗型性風俗特殊営業)に関する開業相談・届出サポートを行っています。
特に、次のようなご相談を多くいただいています。
・これから借りようとしている物件が、事務所・待機所として使えるか
・事務所と待機所を同じ場所にして問題がないか
・現在の運営方法が、受付所と判断されるリスクはないか
・ホームページやSNSの表記が、警察対応上問題にならないか
・増店・移転時に、どこまで届出が必要か
初回のご相談は無料です。まだ開業を決めていない段階でも、「事故らないための確認」としてご利用いただけます。
無店舗型営業は、始めてから修正するより、始める前に確認する方が圧倒的に安全です。
少しでも不安があれば、お気軽にご相談ください。
【免責事項】 本記事の情報は2026年1月時点のものです。法令や運用は変更される可能性がありますので、実際の手続きの際は必ず管轄の警察署または専門家にご確認ください。本記事の内容に基づいて生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。