風営法の許可・届出の種類を整理|1号許可が必要な「接待」の具体的な判断基準とは
夜のお店の開業を考えている方、あるいは既に営業している方なら、「風営法」という言葉は聞き慣れていると思います。ただ、法律である以上、条文を読んでみても「結局うちの店は大丈夫なのか」「今の運用で問題ないのか」という疑問が残りがちです。
この記事では、キャバクラ・ガールズバー、スナックなどの飲食店にまつわる風営法の全体像を把握したうえで、特に問い合わせの多い「1号許可(接待飲食等営業)」がどんな店に必要なのか、典型的なパターンを解説します。この全体像を理解することで、これから開業する方も、今の運用を見直したい方も、風営法をもっと身近に感じられるはずです。
まずは「許可」と「届出」の違いを理解する
風営法の全体像を理解するうえで、最初に押さえておくべきが「許可」と「届出」の違いです。
警察(公安委員会)の審査を経て、認められて初めて営業できる制度です。申請から許可が下りるまでに時間がかかり、基準も厳格です。一度許可を取れば、その範囲内で営業できますが、違反すると取り消しもあり得ます。
要件を満たしていることを届け出る制度です。許可に比べると手続きは簡便ですが、「届け出れば何でもOK」ではありません。
届出の要件から外れれば、やはり違法営業になります。
この違いを踏まえて、飲食店に関係する風営法は次の3つに分類されます。
飲食店に関係する風営法の3分類
飲食店に関係する風営法は、許可・届出の違いを意識しながら、次の3つに分けることができます。
① 風俗営業(1号・2号・3号)… 接待・低照度・区画席【許可制】
風営法第2条第1項に定める「風俗営業」のうち、飲食店に関係するのが1号から3号です。なお、これらは許可制です。
キャバクラ、ホストクラブ、ラウンジ、接待ありのスナックなど、「接待をして飲食させる営業」です。
営業所内の照度を10ルクス以下として営む飲食店です。10ルクスとは、ろうそく程度、または上映前の映画館くらいの暗さです。
他から見通すことが困難で、かつ広さが5平方メートル以下である客席を設けて営む飲食店です。
1号許可というものが、キャバクラ・スナック・ホストクラブなど接待を行う飲食店の開業で必要な許可になります。風営法許可と言えば、ほとんどこの1号許可を指すことが多いです。
② 特定遊興飲食店営業…深夜×遊興のセット【許可制】
音楽、ダンス、ショーなどの遊興を提供しつつ、深夜帯(午前0時以降)に営業する場合がこれに該当します。
ざっくり言えば、「深夜にお酒+遊ぶ場(遊興)」までセットで提供する世界です。深夜0時以降も営業するクラブやライブハウスなどが典型例ですが、バーでも演出の仕方次第で該当する可能性があります。
③ 深夜酒類提供飲食店営業…深夜に酒類を提供する飲食店【届出制】
バーや居酒屋など、深夜0時以降もお酒を出して営業したい場合に出てくるのが届出制です。よく深酒と呼ばれるものですね。
許可ではなく届出なので、手続きは比較的簡素ですが、ここで最重要なのが「接待をしないことが前提」という点です。「深夜に営業できる代わりに、接待を捨てる」という発想で理解すると間違いにくくなります。既に深夜営業をしている店で、実はスタッフの接客が接待にあたっているケースも散見されます。
2025年の風営法改正以降、取り締まりが強化されたことによって、摘発されるガールズバーが激増していますね。これは、この深夜酒類の届出で営業しながらも、接待を行っていたため、無許可営業に該当するからです。
罰則も大幅強化されているので、接待行為を続けたい場合、必ず1号許可へ切り替えてください。罰則の内容は下記リンクからぜひ読んでみてください。

「うちは風営法、関係ないですよね?」 この思い込みが最も危険です
開業相談や運用見直しの相談で最も多いのが、「バーのつもりなので接待はしない。だから風営法は関係ない」「スナックは飲食店だから許可はいらない」「ガールズバーはカウンター越しだから大丈夫」といった声です。
既に営業中の店でも、「今まで問題なかったから大丈夫」と考えている経営者は少なくありません。
確かに、警察の立入や通報がなければ、問題なく営業できていた店は数多くあります。しかし昨今の風営法厳格化に伴い、これまでリスクを抱えながら営業していた店はもう危険な状況です。
風営法に抵触するかどうかは、店名や業態名では決まりません。警察が見ているのは、実際にどんな営業をしているかです。看板に何と書いてあっても、接待をしていれば1号許可の対象ですし、深夜0時以降も酒類を提供していれば深夜酒類提供の届出が必要です。
重要
2025年の法改正により、無許可営業の罰則は大幅に強化されました。5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合は最大3億円以下の罰金、若しくは併科される可能性があります。「知らなかった」では済まされない時代に入っていますので、既に営業している店も、今一度、自店の運用が法的に問題ないか確認する必要があります。
判断のポイントは極めてシンプルです。店が提供しているのはお酒と食事だけなのか、それとも「接客(接待)」を売りにしているのか。さらに深夜0時以降の営業があるのか、あるいは「遊興(クラブ的な楽しさ)」を提供しているのか。この違いで必要な手続きが大きく変わります。
なぜ1号許可が必要なのか
風営法が問題にするのは、「お酒を出しているかどうか」それ自体ではありません。警察が見ているのは、営業の中身が 飲食の提供なのか、それとも接待を含む歓楽的なサービスなのか という点です。
飲食店が単に料理や酒類を提供するだけなら、基本的には一般の飲食店営業(食品衛生法の世界)として整理できます。
しかし、そこに スタッフが特定のお客さんを継続的に相手して、楽しませたり気分よくさせる行為(接待) が加わると、話が変わります。
接待を伴う営業は、トラブル(客同士・従業員とのトラブル、酔客対応、料金・勧誘をめぐる揉め事等)が発生しやすく、地域の治安や生活環境にも影響を与えやすい業態です。
そのため風営法では、接待営業を「誰でも自由に始めてよい営業」ではなく、一定の基準を満たした店舗だけができる 許可制の営業としています。
つまり、1号許可が必要になる理由はシンプルで、
- 接待がある営業は、一般の飲食店よりもトラブルが起きやすい
- だから 事前に適正に営業できる店かどうかを審査する必要がある
- その審査を通った店にだけ 許可が出る(=許可制)
という仕組みになっています。
1号許可が必要なお店の例
1号許可が必要かどうかで悩む方の多くは、営業スタイルが次のいずれかに近いケースが多いです。
パターン1:スタッフが「席につく」営業
キャバクラ・ラウンジのように、スタッフがお客さんの横について会話を続ける、場を盛り上げる、といった運用は典型的な1号許可の該当パターンです。
ここで重要なのは、「席に座った」かどうかではなく、特定のお客さんに対して継続的にサービスを提供する構造があるかです。
たとえば、会話・お酌・盛り上げ役がセットになっているなら、それは「飲食の提供」ではなく「接待をして飲食させる営業」と判断されやすくなります。
パターン2:カラオケ・ゲームが接待の道具になっている
カラオケがあるだけで直ちにアウト、という話ではありません。
しかし、スタッフが特定の客とデュエットする、手拍子で盛り上げ続ける、ゲーム相手になるといった運用が常態化しているなら、接待と評価される可能性が上がります。
ポイントは、機械の有無ではなく使い方です。
「お客さん同士で勝手に楽しんでいる」のか、「店としてスタッフが楽しませる役割を担っている」のかで、法的な意味合いが変わります。
パターン3:「カウンター越しだからセーフ」という誤解
ガールズバーで一番事故が多いのが、このゾーンです。
カウンター越しで接客しているからといって、接待にならないわけではありません。
風営法上の判断は、カウンターの有無ではなく、特定の客に対する継続的なもてなし(接待)が実態としてあるかどうかで決まります。
たとえば、特定のお客さんと長時間話し続ける、キャストドリンクで同席に近い形を作る、指名や推しの仕組みで個客対応を固定化する。このような運用があると、接待性が強く見られるリスクが高まります。
「深夜酒類」と「1号許可」は原則として両立不可
ここは特に誤解が多いのですが、「深夜酒類の届出」と「1号許可」は原則として両立できません。
つまり、接待をするなら1号許可が必要。深夜0時以降に営業したいなら深夜酒類提供飲食店の届出が必要。また、この届出は、接待をしないことが大前提です。
制度の発想としては、以下のようになっています。
- 深夜まで営業できる自由度を与える代わりに、接待はさせない
(=深夜酒類提供飲食店営業) - 接待をさせるなら、深夜営業は制限し、その代わり許可制で管理する
(=風俗営業1号)
例外として、同じ箱で両立できるケースもありますが、ほぼ不可能なため割愛します。
まとめ
風営法は、先に全体像をわかってしまえば、自分のお店がどの立ち位置にあるのか、理解しやすくなります。
また、警察が判断するのは店名や名目上業態ではなく、現場で実際にどのような営業をしているかです。例えば、バーと名乗っているからと言って、実際に接待行為をしていたら風営法上の無許可営業に該当します。
本コラム内で再三お伝えしておりますが、必要な許可および届出の一番重要な判断基準は「接待があるかどうか」です。
お酒や食事を出すだけなら普通の飲食店の枠で動けますが、スタッフが特定のお客さんに付きっきりになって会話を続けたり、盛り上げたり、お酌をし続けたりすると、原則として接待をして飲食させる営業として扱われます。そうなると、必ず1号許可を取得しなければなりません。
次に問題になりやすいのが、深夜0時以降の営業です。
深夜にお酒を出して営業したい場合は、深夜酒類提供の届出が関係してきます。ただしこの届出は、接待をしないことが前提です。
つまり「深夜もやりたい」「接待もやりたい」を同時に満たす運用は、原則不可能です。
2025年の改正以降、罰則も厳重化され、今まで「なんとなく摘発されてこなかった店」が見逃され続ける時代ではなくなってきています。
だからこそ、これから開業する方は最初から正しい手続きを踏んで始めること。既に営業している方は早めに運用を見直すこと。これが、店舗を守り、スタッフを守り、事業を継続させるための最も合理的な選択になります。
