ソープランド廃業時の手続きと注意点!事業譲渡・M&Aは可能か?
先日、仙台市内の老舗ソープランドが廃業したというニュースが流れました。地元では知らない人がいないくらいの店でしたから、業界関係者だけでなく、一般の方からも「あの店が閉まるなんて」という驚きの声も出ているのではないでしょうか。
私のところにも「あの物件を買い取って同じ営業はできるのか」「事業を引き継げないか」といった問い合わせが何件か来ています。
こうした相談を受けるたびに思うのは、ソープランド(店舗型性風俗特殊営業)について、かなり大きな誤解があるということです。特に多いのが次の二つ。
「届出制なんだから、届け出せば誰でもできるんでしょ?」 「廃業した店を買い取れば、そのまま同じ営業ができるんでしょ?」
どちらも違います。今回のコラムでは、この廃業の件を入り口にして、届出制という制度の実態と、事業承継がなぜ難しいのかを整理してみたいと思います。
「届出制」は「自由にできる」という意味ではない
「ソープって法律上はどういう扱いなんですか」という質問をよく受けます。
正式には「店舗型性風俗特殊営業」といって、風営法で規制されている業態です。そしてこれは届出制です。許可制ではありません。
ここで多くの人が勘違いします。「届出制なら、届け出さえすれば営業できるんでしょ?」と。
確かに法律の建付けとしては、一定の要件を満たして届出をすれば営業できることになっています。許可のように「行政が審査して認める・認めない」という形ではありません。
ただし、届出が受理されるための要件が極めて厳しいんです。
まず営業できる場所が限られています。風営法28条は、学校や図書館などの周囲200メートルの区域内での営業を禁止していますし、都道府県が条例でさらに地域を指定して禁止することができます。
そして宮城県では、条例と規則でこれが具体化されています。
宮城県の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第11条では、店舗型性風俗特殊営業のうち第1号・第2号・第6号営業(ソープは第1号)について「県内全域」で営業禁止と定めています。
つまり、宮城県では新規のソープ届出は条例・規則で明文化された禁止により受理されないのです。よって、新規でソープを経営しようと思っても宮城県では不可能なわけです。
既存の店が営業しているのは、この規制が導入される前から営業していた既得権です。
「事業を買い取れば営業できる」という誤解
新規で届出をしても、受理されないということは行政書士ではなくてもご存じの方は多いでしょう。そこで、必ず出てくるのが「あの物件と事業を買い取って、同じ営業を引き継ぎたい」という話です。
結論としては、事業譲渡による承継は極めて難しいです。
なぜかというと、店舗型性風俗特殊営業の届出は、あくまで「その営業者」が「その場所」で営業することを届け出るものだからです。事業を譲り受けて営業者が変われば、法律上は新規の届出になります。
そして先ほど書いたように、宮城県では新規届出は事実上受理されません。
「でも、同じ場所で同じ設備を使うんだから、実質的には継続じゃないか」と思われるかもしれません。気持ちは分かりますが、風営法の世界では通用しない理屈です。
営業者が変わる時点で、それは新規です。たとえ物件も設備も従業員も引き継いだとしても、営業主体が変われば届出は一から出し直しになります。
これは「制度の隙間」とか「運用の厳しさ」という話ではなく、届出制度そのものの仕組みです。届出というのは「誰が営業するか」を届け出るものであって、「この場所で営業する権利」を届け出るものではないからです。
したがって、事業譲渡で同じ営業を引き継ぐというのは、事業譲渡で営業主体が変わる場合、実務上は新規届出として扱われる可能性が高く、宮城県内で同業態を継続するハードルは極めて高い、というのが実務的な結論です。
では相続ならどうなのか
ここまで読んで「じゃあ相続ならどうなんですか?」と思われた方もいるでしょう。
残念ながら、相続でも承継はできません。
これは多くの方が誤解しているところです。「相続なら権利が引き継げるはず」と思われがちですが、店舗型性風俗特殊営業については、通達で承継が否定されています。
風営法には、一般の風俗営業(パチンコ店やキャバクラなど1号~8号営業)について、相続・合併・分割による承継を認める規定があります(風営法第7条、第7条の2、第7条の3)。
ところが性風俗関連特殊営業については、これらの規定が準用されていません。つまり、法律上、承継という制度そのものが存在しないのです。
これは警察庁の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」でも明記されています。
したがって、
- 事業譲渡 → 新規届出扱いになるので、宮城県では不可
- 相続 → 承継制度自体が認められていないので不可
- 法人の合併・分割 → 同じく承継制度が認められていないので不可
どの方法を取っても、店舗型性風俗特殊営業を引き継ぐことはできません。
営業者が亡くなったり、法人が解散したりすれば、その時点で営業は終了です。たとえ建物や設備がそのまま残っていても、別の人が同じ営業を始めることは、宮城県では法令上不可能ということになります。
まとめ
今回の廃業報道を受けて、私が伝えたかったのは次の3点です。
① 店舗型性風俗特殊営業は届出制だが、届出制=自由に営業できる、ではない。
風営法28条と宮城県条例・規則により、宮城県内では新規のソープ届出は法令上認められていません。届け出れば誰でもできるという話では全くありません。
② 事業譲渡による承継は不可能。
営業者が変われば新規届出になるため、既存店を買い取って同じ営業を続けるというのは宮城県のように条例で新規出店が禁止されていれば、制度上不可能です。
③ 相続や法人の合併・分割でも承継できない。
「相続なら引き継げるのでは」という誤解が非常に多いのですが、性風俗関連特殊営業については風営法で承継制度そのものが認められていません。
つまり、宮城県で既存のソープが廃業すれば、どのような方法を使っても同じ営業を再開することはできないということです。既得権として残っている営業が消えれば、それで終わりです。
風営法の実務では、「知らなかった」では済まないことが多くあります。特に性風俗関連特殊営業については、一般の風俗営業とは全く異なる規制がかかっていることを理解しておく必要があります。
もし既存店の関係者で今後について相談したいことがある方は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
