キャバクラの時間外営業(風営法第13条違反)とは?営業停止・罰則を行政書士が解説
キャバクラやスナックを経営していると、「あと30分だけ営業したい」「この客、まだ帰りたがらない」という状況、ありますよね。他の店もやっているし、少しくらい大丈夫だろう…そう考えたくなる気持ちも分かります。
しかし、たとえ15分、20分の時間外営業であっても、営業停止処分につながる可能性が十分にあります。
「逮捕される」「罰金が何百万円」なんて噂も聞くけど、本当のところはどうなのか。今回は、風営法における時間外営業の本当のリスクをわかりやすく解説します。
そもそも、営業時間は何時まで?
風営法第13条によって、キャバクラやスナック(風俗営業1号)は深夜(午前0時〜午前6時)の営業が禁止されています。つまり、原則として営業できるのは午前6時〜午前0時までです。
例外:営業延長許容地域では午前1時まで
ただし、繁華街など都道府県条例で指定された営業延長許容地域では、午前1時まで営業できます。
例:東京都の営業延長許容地域
- 歌舞伎町
- 赤坂
- 池袋
- 渋谷
- 六本木
など、飲食店や風俗営業店が集中する商業地域が指定されています。
営業時間の詳細は都道府県条例によって異なります。お店の所在地を管轄する警察署で必ず確認してください。また、営業延長の適用条件(防犯対策協力など)が設けられている地域もあります。
時間外営業したら逮捕される?
時間外営業それ自体では逮捕されない
意外かもしれませんが、時間外営業それ自体に刑事罰はありません。午前0時(または午前1時)を過ぎて営業したからといって、即座に逮捕されるわけではありません。時間外営業は、まず行政処分(営業停止命令等)の対象となります。
ただし、営業停止命令違反は刑事罰の対象
ここが重要なポイントです。
時間外営業をして行政処分(営業停止命令)を受けた場合、その命令に違反して営業を続けた場合は、刑事罰の対象になります。
- 時間外営業 → 行政処分(営業停止命令)
- 営業停止命令に違反 → 刑事罰
この流れを理解することが重要です。
どんな行政処分を受けるのか?
時間外営業に対する行政処分は、違反の態様や常習性によって段階的に重くなります。
1. 口頭注意・行政指導
初回で軽微な時間超過(数分程度)の場合、まずは口頭注意や行政指導で終わることもあります。ただし、これはあくまで「軽微」かつ「初回」の場合です。
2. 指示処分(警告)
書面による正式な警告です。「営業時間を守りなさい」と注意されます。
風営法第25条に基づく行政処分であり、記録として残ります。
3. 営業停止命令
指示を無視したり、常習的に違反していると、営業停止命令が出されます。
警察庁の処分基準では、時間外営業の標準的な営業停止期間は40日とされています。ただし、実際の処分は違反の態様、常習性、悪質性を総合的に考慮して、20日から6ヶ月の範囲で決定されます。
詳しくは後述します。
4. 許可取消
営業停止命令にも従わなかったり、極めて悪質な場合は、許可取消となります。
許可を取り消されたら5年間は再申請できません。事実上、その場所での営業継続が不可能になります。
営業停止命令を無視したら?【重要】
営業停止期間中に、この停止命令に違反して営業を続けると、風営法第49条第4号違反で刑事罰の対象になります。
罰則
- 個人:5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金(またはこれを併科)
- 法人:3億円以下の罰金刑
※拘禁刑は、2025年6月施行の刑法改正により、懲役刑と禁錮刑を統合した新しい刑罰です。
つまり、時間外営業それ自体では逮捕されませんが、行政処分(営業停止命令)を受けた後に、その命令に違反した場合は刑事罰の対象となり、逮捕される可能性があります。万が一営業停止命令が下された場合は、必ず命令に従ってください。
「5分だけ」「10分だけ」もダメ?
法律で決まっている以上、1分でも営業時間を超過すれば違反です。「ちょっとくらい」「他の店もやっている」という理屈は通用しません。
ただし、実務上の処分は、違反の態様、常習性、悪質性を総合的に考慮して行われます。
初回の違反で数分程度の時間外営業でしたら、口頭注意や指導処分で済む可能性もあります。しかし、常習的であったり、大幅な超過(30分、1時間など)であれば、初回でも営業停止処分を受ける可能性があります。
「0時で接待やめて、普通のバーとして営業」はOK?
現行法上、完全に不可能というわけではありませんが、実質的にはほぼ不可能に近いです。
風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の違い
まず、この2つの制度の違いを理解する必要があります。
- 対象:接待行為を伴う飲食店(キャバクラ、スナックなど)
- 営業時間:午前0時まで(地域により午前1時まで)
- 手続き:公安委員会の許可が必要
- 対象:接待行為を伴わない飲食店
- 営業時間:制限なし(深夜営業可)
- 手続き:警察署への届出
- 条件:接待行為を一切行わないこと
併用が実質的に不可能に近い理由
原則として、ひとつの店舗(一つの営業主体)で風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業を併用することはできません。
仮に、同じ場所で午前0時以降に営業形態を切り替えるには、以下の3条件をすべて満たす必要があります。
- 全ての客を帰らせる
- 接客従業者も全員帰らせる(客として残るのも禁止)
- 完全に別会計として営業する
「ちょっとだけ従業員に残ってもらう」「常連客だけ残す」などが一切できず、文字通り別のお店として営業しなければなりません。制度上は不可能ではないが、現実的には運用不可能なことが多いです。
なぜ時間外営業は厳しく取り締まられるのか?
1. 客観的な「証拠」の明確さ
風営法における他の違反(例:接待の定義など)は、現場での主観が入る余地がありますが、時間は「動かぬ証拠」です。
「接待をしていたかどうか」は議論の余地があるかもしれませんが、「午前0時を過ぎて客に飲食をさせている」という事実は、時計を見れば誰の目にも明らかです。
警察にとって、最も確実に、かつ短時間で違反を確定させられるのが営業時間の規制です。そのため、重点的な取締対象となっています。
2. 「不法行為の温床」を断つための突破口
時間外営業は、それ単体での問題以上に、重大な違法行為を引き出す「入り口」としての側面があります。
深夜まで営業を続けている店は、得てして以下のような問題を抱えている可能性が高いと判断されます。
- 無許可営業
- 18歳未満の雇用
- 違法な客引き
- 薬物の存在
- 反社会的勢力への利益供与
3. 「善良な風俗環境」を守るための最後の砦
風営法の最大の目的は、街の平穏と少年の健全育成を守ることです(風営法第1条)。
深夜営業の常態化は、利用客の過度な浪費や生活破綻を招きやすく、結果として社会問題につながります。また、深夜に酔客が街に溢れることは、騒音、喧嘩、ゴミ問題など、近隣住民の生活を直接的に侵害します。
「夜は眠る時間である」という社会の規律を守ることが、風営法の根幹です。
まとめ|時間外営業のリスクを正しく理解する
風営法許可1号を得て営業しているキャバクラやスナックが、営業時間を超過して営業した場合の流れを整理します。
違反から処分までの流れ
- 時間外営業(風営法第13条違反)
- それ自体に刑事罰はない
- 行政処分の対象になる
- 行政処分の段階
- 口頭注意・行政指導(軽微な場合)
- 指示処分(書面による警告)
- 営業停止命令(20日〜6ヶ月、標準40日)
- 最悪の場合、許可取消(5年間再申請不可)
- 営業停止命令違反(風営法第49条第4号)
- 5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金(併科あり)
- 法人は、罰金最大3億円
風営法許可申請は当事務所へ
キャバクラやスナックの開業をお考えの方、既存店舗の営業でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
当事務所では、仙台市・宮城県全域を中心に風営法にまつわるお店の開業サポートをしています。営業時間規制を含む風営法の遵守について、ご不明な点があればいつでもご相談ください。
【免責事項】 本記事の情報は2025年12月時点のものです。法令や運用は変更される可能性がありますので、実際の手続きの際は必ず管轄の警察署または専門家にご確認ください。本記事の内容に基づいて生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。