欠格事由は犯罪歴だけ?風俗営業許可の「人的要件(欠格事由)」とは

物件も決めた、内装業者も手配した、あとは申請するだけ。そう思って行政書士のところへ相談に来られた方が、書類を揃えている途中で申請をストップせざるを得なくなるケースがあります。

その最もよくある理由は人的要件の欠格です。

法人の相談役が、実は過去に風営法違反で処分を受けていた。管理者として考えていた店長候補が、別の店舗でも管理者を兼務していた。6年前だと思っていた入管法違反の罰金刑がまだ5年経っていなかった。

キャバクラやホストクラブなどの接待飲食営業、いわゆる風俗営業1号では、物件がどれだけ良くても、内装がどれだけ完璧でも、申請者や管理者が欠格事由に当たると、原則として許可は出ません。法人申請なら役員全員が対象です。

この記事では、そうした失敗を防ぐために、風俗営業許可における人的要件、つまり欠格事由について、実務でよく見る注意点を中心に解説します。

目次

人的要件とは何か

人的要件とは、簡単に言うと次のような確認です。

  1. 風俗営業を任せてよい人物か
  2. 過去(基本5年以内)に重大な違反や反社会的勢力との関係がないか
  3. 法人なら、役員全員がクリアしているか

法律上、風俗営業法第4条1項には13の欠格事由が定められています(2025年施行の改正で追加された事項もあります)。

実務で頻出の主要な欠格事由

(1)営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

2022年4月から成年年齢が18歳になっているため、申請者は基本的に18歳以上が前提です。

ただし、例外として、未成年者が風俗営業者の相続人であり、その法定代理人が一定の欠格事由に該当しない場合には、欠格から外れる余地があります。

(2)破産して復権していない者

破産したことそのものより、ポイントは復権しているか、つまり法的に資格制限が解けているかです。

本籍地の自治体で取る身分証明書で事前に状況確認をしておくと安心です。

(3)一定の刑罰歴と5年の数え方

ここが一番の落とし穴です。理由は以下のとおりです。

  • 罰金は本人の記憶が曖昧になりやすい
  • 5年の起算点を誤解しやすい
  • どんな罰金でもアウトではなく、対象となる罪が限定されている

風営法4条1項2号は、次の二段構造になっています。

(A)罪名を問わず1年以上の拘禁刑を受けた場合
→ 執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者

(B)列挙された特定の罪で1年未満の拘禁刑または罰金を受けた場合
→ 同じく、執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者

つまり、すべての罰金がアウトではなく、風営法が列挙する特定の罪(風営法違反、わいせつ・賭博・人身売買、売春関連、児童福祉法・職業安定法・入管法・労働者派遣法・技能実習法違反など)での1年未満の拘禁刑または罰金が問題になります。

たとえば、風営法違反での罰金や、入管法違反での罰金は、罰金の納付を完了した日(=執行を終えた日)から起算して5年を経過していなければ欠格事由に当たります。

逆に、交通違反など、列挙されていない罪での罰金は、それ単体では(B)の列挙罪に該当しないため、基本的には欠格事由になりません。ただし、1年以上の拘禁刑が付いた場合は(A)で問題になり得ます

執行猶予がある場合、起算点は「執行猶予が満了した日(=執行を受けることがなくなった日)」です。
その日から5年を経過しているかで判断されます。判決日や事件日から数えるとズレるため注意が必要です。

記憶が怪しい場合は、行政書士に事実関係と時期の整理を依頼して、申請戦略(待つか体制を組み替えるか)を先に決めた方が、結果的に安く済みます。

(4)暴力団排除

条文上の表現は「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者」とあり、現役の暴力団員が許可不可なのは当然ですが、審査で引っかかりやすいのは以下の点です。

  • 元暴力団員については、条文上明確な経過年数が必要という規定はありませんが、実務上は離脱から相当期間が経過しているかが審査されます
  • 書面上の名義ではなく、実質関与(資金提供・指示命令・実質経営)が見られる

また、2025年改正で追加された第13号により、暴力的不法行為等を行うおそれのある者が出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有する者も欠格事由となりました。

反社排除は、風営法だけでなく暴排条例の観点でも問題化しやすいため、疑われると、追加資料・追加聴取・関係性の説明が増えて、実務負担が一気に重くなります。

(5)過去に許可取消しを受けている

過去に風俗営業許可を取り消され、その取消しの日から起算して5年を経過しない場合も、欠格事由に該当します(第6号)。これは、たとえ別の都道府県で申請しようとしても、申請者本人や法人の役員等に取消し歴があれば影響します。

2025年11月28日施行の改正で追加された欠格事由

申請者が法人の場合、申請法人そのものに取消し歴がなくても、以下の場合に欠格となります。

第7号:密接法人の取消し歴
親会社・子会社・兄弟会社など、株式や資金・人事・取引のつながりで事業に実質的な支配・重要な影響がある「密接な関係を有する法人」が過去5年以内に取消しを受けていると、申請者も欠格に該当します。

第8号:処分逃れの返納
立入調査の後や聴聞公示後に許可証を返納して処分を避けた場合、返納日から5年経過しないと欠格に該当します。

第9号・第10号:法人の合併・分割による処分逃れ
聴聞期日公示後や立入後に合併で消滅した法人、または分割で事業を承継させた法人についても、5年間は欠格に該当します。また、これら法人の役員だった者(公示日または立入日前60日以内)も対象となります。

結果として「県を変える」「法人を作り直す」「代表者だけ差し替える」だけでは通りにくく、資金の出どころ、指示命令系統、利益の帰属、旧関係者の関与の有無まで説明が求められるようになりました。

(6)心身の故障により適正な営業ができない者

条文上は「心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者」とありますが、通院歴がある=即アウトではありませんが、営業の管理や統制が取れない状態だと判断されるとリスクになります。該当可能性があるなら、申請前に所轄や行政書士へ相談し、説明の組み立てを作っておく方が安全です。

(7)法人申請は役員全員が対象

法人で許可を取る場合、第12号により、役員のうち一人でも第1号から第6号まで又は第8号から第10号までのいずれかに該当すると、法人としての申請はできません

また役員の範囲は、肩書よりも実態で見られます。相談役・顧問が常に対象とは限りませんが、実質的に経営・業務執行に関与していると判断されれば対象になり得るため、名目役員や実態不明のポジションがある法人は要注意です。

2025年11月28日施行の改正で何が変わったか

2025年の改正では、欠格事由の確認が一段強化され、グループ法人まで影響が及ぶ仕組みが導入されました。施行日は2025年11月28日です。

これまで:この法人、この役員に問題がないか
これから:近い関係の法人も含めて問題がないか

また、警察庁通達により、法人申請の添付書類に以下が追加されました。

  • 第7号・第13号に該当しない誓約書
  • 密接法人の名称等の書面(第7号イからハまでに掲げる法人を記載)
  • 株主名簿の写し(申請者が株式会社の場合)

実際、警視庁、大阪府警、千葉県警などの各警察も、令和7年11月28日施行に伴う添付書類の追加を明確にしています。

グループ運営や別法人で複数店舗が一般的な事業者ほど、ここは早めに確認することが必要です。

よくある質問

申請者と管理者の欠格事由は同じですか?

重なる部分は多いですが、完全に同じではありません。

管理者は風営法24条2項で管理者になれない者が定められ、そこから風営法4条の欠格事由の一部を参照する構造になっています。

営業者側にだけ問題になる欠格(法人の関係、新設された第7号など)もあるため、管理者としては問題なかったから営業者の人的要件もOKとは言い切れません。

罰金刑でも欠格になりますか?

罰金でも欠格になる場合があります。

ポイントは対象となる犯罪に当たるかと、執行を終えた日または執行を受けないことになった日から起算して5年を経過しているかです。

風営法4条1項2号で列挙されている特定の罪(風営法違反、わいせつ・賭博・人身売買、売春関連、児童福祉法・職業安定法・入管法・労働者派遣法・技能実習法違反など)での罰金が対象となります。

交通違反など、列挙されていない罪での罰金は、基本的には欠格事由になりません。

執行猶予が終わったらすぐに申請できますか?

いいえ。執行猶予満了日が起算点となり、そこから5年を経過して欠格期間を外れます。

まとめ

風俗営業1号許可の審査では、店舗の設備以上に、申請者や役員、管理者が「欠格事由」に該当していないかという点が厳格にチェックされます。

実務の現場で、特につまずきやすいポイントは次の3つです。

1. 罰金刑にまつわる記憶のズレ
6年前のことだから大丈夫と思っていても、入管法や風営法違反などの特定の法に関する罰金刑は、罰金の納付を完了した日(=執行を終えた日)から起算して5年が経過している必要があります。執行猶予の場合は満了日が起算点となり、そこから5年を数えます。そもそも対象となる罪種かどうかの判断を誤ると、その時点で申請はストップしてしまいます。記憶に頼らず、まずは事実関係を整理することが先決です。

2. 役員として扱われる範囲
株式会社の登記簿に載っている取締役だけを見ればよいわけではありません。実質的に経営を左右する相談役や顧問なども、審査の場では役員と同等に扱われる可能性があります。法人で申請する場合は、関係者全員に欠格事由がないかを漏れなく確認しなければなりません。

3. グループ法人への影響(2025年11月28日施行の改正)
改正法により、親会社や子会社、兄弟会社といった関係の深い法人が過去5年以内に許可を取り消されている場合、申請者本人に問題がなくても不許可になるリスクが加わりました。株主名簿の提出なども求められるようになり、グループ全体でのクリーンな経歴が問われます。

失敗を防ぐための準備の順番

  1. 申請者本人(法人の場合は全役員)に欠格事由がないか調べる
  2. グループ会社に過去の取消歴がないか確認する
  3. 現場を任せる管理者候補が要件を満たしているか確かめる
  4. すべてクリアした段階で、ようやく物件や内装の契約に進む

風俗営業1号許可は、物件の良し悪しで勝負する前に、まずは「誰が責任を持って運営するのか」という体制を固めることがすべてです。この優先順位を守ることこそが、確実な開業と安定した経営への第一歩となります。

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【免責事項】 本記事の情報は2026年2月時点のものです。法令や運用は変更される可能性がありますので、実際の手続きの際は必ず管轄の警察署または行政書士にご確認ください。本記事の内容に基づいて生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。

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