飲食店を開業する際、多くの方が保健所による飲食店営業許可(食品衛生法第55条)を主な手続きとして認識しています。
しかし、営業形態や物件の内容によっては、風営法上の許可・届出が別途必要となる場合があります。また、消防法令上の届出や設備確認も、着工前に済ませておくべき手続きのひとつです。
これらの確認が遅れた場合の影響は深刻であり、風営法上の許可が必要な営業形態であると物件契約後に判明しても、用途地域の制限により許可申請や届出を行えない場合があります。さらに、内装工事完了後に構造基準への不適合が発覚すれば、作り直しによる追加費用が生じます。
本コラムでは、飲食店の開業前に確認すべき風営法上の主要な論点を中心に、あわせて消防法令上の留意点も整理します。
風営法上の許可・届出の要否
飲食店営業許可は飲食物を提供する営業一般に必要な手続きですが、それとは別に、店内の構造や接客スタイルによって風営法上の許可または届出が必要となる場合があります。
(1)接待を行う営業(風俗営業1号)
風営法第2条第1項第1号に規定される接待飲食等営業を行う場合、公安委員会の許可が必要です(同法第3条第1項)。
接待とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(同法第2条第3項)と定義されており、スタッフが特定の客に継続して談笑・お酌・遊戯等のサービスを提供する営業形態が該当します。指名制度・同伴制度や、スタッフへのドリンク提供を前提とした仕組みがある場合も、接待の実態があると評価される材料となり得ます。
(2)照度が10ルクス以下の営業(風俗営業2号)
客席の照度が10ルクス以下となる営業は、接待の有無にかかわらず風俗営業(2号)の許可が必要です(風営法第2条第1項第5号)。薄暗い照明による雰囲気を重視する設計の場合、照度計による確認が不可欠です。
(3)見通しの悪い小区画席を設けた営業(風俗営業3号)
外部から見通しにくい構造で、かつ客席面積が5㎡以下の区画を設けた場合、風俗営業(3号)の許可が必要となります(同法第2条第1項第3号)。kこれは個室と称しているかどうかではなく、構造と面積の要件が揃うかどうかで判断されます。
(4)深夜に酒類を提供する営業(深夜酒類提供飲食店営業)
主食を常態として提供しないバー・酒場等が深夜(午前0時から午前6時)に営業する場合、風営法第33条第1項に基づく届出が必要です。ラーメン屋・定食屋等が深夜に営業するだけであれば、この届出は不要です。
無許可・無届営業の罰則
2025年改正後における風俗営業の無許可営業に対する罰則は、個人で5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科、法人で3億円以下の罰金です。
また、深夜酒類提供飲食店営業の無届営業は50万円以下の罰金です。
なお、風営法違反によって保健所の飲食店営業許可が当然に取り消されるわけではありませんが、公安委員会による処分に連動して同一施設における飲食店営業の停止が命じられるケースがあります。
物件契約前の地域制限の確認
深夜営業を前提とするバーや居酒屋を計画する場合、物件の選定段階で法規制の確認が必要です。
深夜酒類提供飲食店営業については、用途地域による営業制限が設けられています。また、地域によっては深夜営業に伴う騒音について公害防止条例等による規制が課される場合があります。
風俗営業1号許可の申請においては、用途地域による制限に加え、学校・病院・児童福祉施設等の保護対象施設との距離制限が課されます。これらの要件を満たさない場合、許可が認められません。
物件の内覧段階で要件を確認せずに契約した場合、許可取得が不可能な物件に賃料を支払い続けるという事態が生じます。こういった事態でも、基本的には事業者責任になります。
内装設計における構造基準の確認
個室や半個室を設ける飲食店では、内装設計を固める前に風営法上の構造基準を確認しておく必要があります。工事完了後に不適合が発覚した場合、作り直しによる費用と時間の損失が生じます。
(1)風俗営業3号への該当
外から見通しにくい構造で、かつ5㎡以下の客席区画を設けた場合、風俗営業3号として許可が必要となります。「個室」という名称の有無ではなく、視線を遮る構造かどうかと区画の面積によって判断されます。個室の数や設計を増やすほど、この基準への適合確認が重要になります。
(2)深夜酒類届出における客室構造の基準
深夜酒類提供飲食店営業の届出を予定している場合も、客室の構造・面積について別途確認が必要です。設計の希望と法的基準が競合しやすい部分であるため、設計の初期段階から確認しておくことが重要です。
(3)照明設備と照度基準
照明については、客席の照度が10ルクス以下にならないよう注意が必要です。雰囲気を重視した照明設計を行う場合は、照度計による実測確認が不可欠です。照度基準への違反は、接待がない営業形態であっても風俗営業許可の取得義務を生じさせます。
消防法令への対応
消防法令に関する手続きも、着工前の段階で確認しておく必要があります。
たとえば、建物の用途変更や間仕切り変更を行う場合、消防法令上の防火対象物変更届出書を変更日の7日前までに提出することが求められます(消防法施行規則第1条の2等)。事務所から飲食店への用途変更や、間仕切りを増設して個室を設けるケースがこれに当たります。
着工後に消防署へ相談した場合、自動火災報知設備の感知器追加・誘導灯の移設・消火器の増設等が追加で必要と判断され、工事のやり直しや追加費用が生じることがあります。
また、前テナントが異なる用途で使用していた物件や居抜き物件では、既存の消防設備が飲食店としての基準を満たしていない場合があります。居抜き物件であっても既存設備をそのまま使用できるとは限らないため、前テナントの用途と設備の状態は早期に確認する必要があります。
まとめ
飲食店の開業において、保健所の飲食店営業許可のみを念頭に準備を進めると、風営法・消防法令上の問題が後から発覚し、物件契約・内装工事・開業日のすべてに影響が及ぶリスクがあります。
特に以下の四点は、物件契約および内装着工の前に確認しておくべき事項です。
①業態に応じた風営法上の許可・届出の要否、②物件の用途地域および保護対象施設との距離、③個室・照明設備に関する構造基準への適合、④消防法令上の届出と設備基準への対応。
確認の時期が遅れるほど修正の負担は大きくなります。風営法上の判断は、そもそも許可・届出が必要かどうかの判断自体が専門的な知識を要するため、業態や内装の方向性が固まった段階で早期に専門家へ相談することを推奨します。
また、開業後に個室の増設・席数の変更・業態変更等を行う場合も、同様の確認が改めて必要となります。開業時に確認したことが将来にわたって有効であるとは限らず、店舗に変化が生じるたびに再確認することが重要です。
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