昨年、全国規模の老舗ソープランドが廃業したというニュースを受けて、「あの物件を買い取って同じ営業ができないか」「事業を引き継げないか」という投稿がSNSで大量に湧きました。
これらに共通するのは、以下の二つの誤解です。
- 「届出制なのだから、届け出さえすれば誰でも営業できる」
- 「廃業した店を買い取れば、そのまま同じ営業を引き継げる」
実は、どちらも正確ではありません。本コラムでは、宮城県の条例をもとに店舗型性風俗特殊営業の届出制度の実態と、事業承継がなぜ認められないのかを、条文および警察庁の解釈運用基準に基づいて解説します。
届出制は「自由に営業できる」という意味ではない
ソープランドは風営法上「店舗型性風俗特殊営業」(同法第2条第6項第1号)に該当し、届出制として規制されています。許可制とは異なり、行政が審査して可否を判断する制度ではありません。
しかし、届出制であることは「要件さえ整えれば誰でも自由に営業できる」ことを意味しません。届出が適法に成立するための要件が極めて厳格に定められており、これを満たさない場合は届出確認書の交付を受けられず、営業を開始することができません。
(1)風営法第28条による立地制限
風営法第28条は、学校・図書館・児童福祉施設等の周囲200メートルの区域内での店舗型性風俗特殊営業を禁止しています。さらに、都道府県は条例によって営業禁止区域をさらに指定することができます。
(2)宮城県条例による全域禁止
宮城県の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第11条は、店舗型性風俗特殊営業のうち第1号・第2号・第6号営業(ソープランドは第1号)について、県内全域での営業を禁止しています。
したがって、宮城県内で新たにソープランド営業を始めようとして届出を行っても、適法な営業としての前提を欠くため、届出確認書の交付を受けられず、営業を開始することはできません。
(3)既存店舗の位置づけ
現在営業している店舗が存在するとしても、それは新規参入が自由に認められているからではありません。規制の施行・適用時に既に存在していた営業が、その範囲内で存続しているにすぎず、新築・移築・増築等があればその存続が認められない可能性も高くなります。
事業譲渡による承継はできない
既存店が廃業するとなると、必ず出てくるのが「物件と事業を買い取って同じ営業を引き継ぎたい」という話です。
ここで整理しておくべき重要な点があります。設備・賃借権・営業用資産を譲渡する契約それ自体は、民事上の問題として別途検討の余地があります。しかし、店舗型性風俗特殊営業としての地位を譲受人が承継することはできません。
店舗型性風俗特殊営業の届出は、「その営業者」が「その場所」で営業することを届け出るものです。営業主体が変わる以上、風営法上はその者にとって新たな営業開始の問題となります。
宮城県では1号営業の新規開始が認められていないため、結果として、譲受人が同じソープランド営業を継続することはできません。同じ場所・同じ設備・同じ従業員を引き継ぐという実態上の連続性は、この判断に影響しません。届出制度は誰が営業するかに紐付くものであり、この場所で営業する権利を移転できる性格のものではないからです。
相続・法人の合併・分割でも承継はできない
また、「相続なら権利を引き継げるのではないか」という誤解も非常に多く見られます。
風営法には、風俗営業(パチンコ店・キャバクラ等の第1号から第8号営業)について、相続・合併・分割による承継を認める規定が設けられています(同法第7条・第7条の2・第7条の3)。
しかし、性風俗関連特殊営業については、これらの規定が準用されていません。つまり、法律上、承継という制度そのものが存在しないのです。警察庁の解釈運用基準においても、性風俗関連特殊営業については相続・法人の合併・分割のいずれの方法によっても営業の他者への承継は認められないとされています。
結論を整理すると以下のとおりです。
| 承継の方法 | 宮城県における結論 |
|---|---|
| 事業譲渡 | 営業主体が変わるため新規開始の問題となり、不可 |
| 相続 | 承継制度が法律上存在しないため、不可 |
| 法人の合併・分割 | 同じく承継制度が認められていないため、不可 |
どの方法を用いても、店舗型性風俗特殊営業を引き継ぐことはできません。営業者が死亡し、または法人が解散した時点で、その営業は終了します。建物や設備がそのまま残存していても、別の者が同じ営業を宮城県内で始めることは法令上不可能です。
まとめ
本記事で確認した法的整理は以下の三点です。
①届出制は自由営業を意味しない 風営法第28条および宮城県条例により、宮城県内では1号営業の新規届出は認められておらず、届出確認書の交付を受けることができません。
②事業譲渡による承継はできない 店舗型性風俗特殊営業としての地位は譲受人に承継されず、営業主体が変わる以上、新たな営業開始の問題となります。宮城県ではその新規開始が認められていないため、結果として承継は不可能です。
③相続・合併・分割でも承継はできない 性風俗関連特殊営業には風営法上の承継制度が設けられておらず、警察庁の解釈運用基準でもその旨が明示されています。
宮城県では、少なくとも事業譲渡、相続、法人の合併・分割によって、既存のソープランド営業を適法に引き継ぐことはできません。
もっとも、法人の株式譲渡により支配権のみが移転する場合は、事業譲渡や合併・分割とは法的構造が異なるため、同列には論じられません。この点は、届出事項の変更や実質的運営主体の問題も含め、個別に慎重な検討を要します。
なお、店舗型性風俗特殊営業の規制は、風営法に加えて都道府県条例・規則によって具体化されます。本記事の結論は宮城県の法令に基づくものであり、他県では状況が異なる場合があります。個別の事案については、必ず所在地管轄の警察署または行政書士に確認してください。
「デリヘルを開業したいけど、どんな届出が必要?」「事務所の要件がよく分からない」 そんな不安や疑問を、営業を始める前にスッキリ解消しませんか?
無店舗型性風俗特殊営業は、営業形態や広告の出し方、事務所の要件など、細かい基準があります。自己判断で進めて後から問題になるケースも少なくありません。
当事務所では、無店舗型性風俗特殊営業に関する相談を無料で受け付けています。 仙台市青葉区を拠点に、宮城県全域に対応しております。
これから開業する方はもちろん、「今の営業スタイルで届出を見直したい」といった現役の経営者様からのご相談も大歓迎です。 少しでも気になることがあれば、まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。安心して営業を続けられるよう、しっかりサポートいたします。