バーやスナック、ガールズバーを開業する際、「深夜も営業したい」「接客でお客さんと話したい」という要望を両立させようとして、風営法上の区分を誤ったまま営業を開始するケースが後を絶ちません。
風営法上、深夜営業と接待行為は原則として同一店舗で同時に行うことができません。2025年6月28日の改正風営法施行初日には、新宿・歌舞伎町においてカウンター越しの談笑が接待と認定されたガールズバーが無許可営業として摘発されています。
改正後の無許可営業に対する罰則は、個人で5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科、法人で3億円以下の罰金と、改正前から大幅に引き上げられています。自店舗の営業形態がいずれの区分に該当するかを正確に把握することが、開業にあたっての大前提となります。
二つの制度の法的位置づけ
(1)深夜酒類提供飲食店営業の届出
風営法第33条第1項に基づく届出制度であり、深夜(午前0時から午前6時)に酒類を提供することをメインとする飲食店が対象です。営業開始の10日前までに管轄警察署へ届出を行うことで、深夜帯の営業が可能となります。
対象となる店舗の例としては、バー・立ち飲み居酒屋・ダイニングバー・カフェバーなどが挙げられます。
この制度の最重要条件は、接待行為を一切行わないことです。届出を行った店舗が接待行為を行った場合、風俗営業の許可を得ずに接待を行ったものとして無許可営業(風営法第3条違反)となります。
(2)風俗営業1号許可
風営法第2条第1項第1号に規定される接待飲食等営業を行うには、公安委員会の許可が必要です(同法第3条第1項)。届出とは異なり、許可申請から許可取得まで相当の期間を要し、営業開始の55日前を目安に申請手続きを開始する必要があります。
対象となる店舗の例としては、キャバクラ・ホストクラブ・スナック(接待あり)・接待行為を行うガールズバーなどが挙げられます。
1号許可を取得することで接待行為が合法的に行えますが、風営法第13条により原則として深夜(午前0時以降)の営業は禁止されます。都道府県条例で定める営業延長許容地域に限り、午前1時までの延長が認められます。
(3)二つの制度の比較
| 項目 | 深夜酒類の届出 | 風俗営業1号許可 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 風営法第33条第1項 | 風営法第3条第1項 |
| 手続き | 警察署へ届出 | 公安委員会の許可 |
| 申請時期の目安 | 営業開始10日前まで | 営業開始55日前が目安 |
| 営業時間 | 制限なし(深夜営業可) | 原則午前0時まで |
| 接待行為 | 不可 | 可 |
二つの制度の併用について
深酒の届出と1号許可を同一店舗で時間帯によって切り替えて運用することは、原則として認められません。
深酒の届出を行っている店舗において接待行為を行えば、それが深夜帯であるかどうかを問わず、無許可営業として摘発の対象となります。「深酒の届出を出しているから多少の接待は問題ない」という認識は法的に誤りであり、2025年以降の厳格な取締り方針のもとでは特に危険な考え方です。
風営法上の「接待」の定義
条文上の定義
風営法第2条第3項は、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。この定義は抽象的であるため、実務上の判断は警察庁の解釈運用基準に基づいて行われます。
接待に該当する行為
警察庁の解釈運用基準によれば、以下の行為は接待に該当するとされています。
談笑・お酌
特定の客のそばにはべり継続して談笑の相手となること、特定の客に継続して酒類を提供することが接待に該当します。判断の核心は「特定の客に対して継続的に関与しているかどうか」であり、カウンター越しの形態であっても、この要件を満たせば接待と評価されます。
歌唱・カラオケ
客とのデュエット、客の歌に手拍子をとること・褒めはやすこと、特定の客に歌を勧めることが接待に該当します。不特定の客の歌に拍手する行為やカラオケの準備をするだけの行為は該当しません。
ゲーム・遊戯
スタッフが客とともにトランプ・ダーツ等のゲームに参加することが接待に該当します。客同士がゲームをする場合は該当しません。
その他、客と身体を密着させる行為や飲食物を口元まで差し出す行為も、接待に該当する可能性があります。
接待に該当しない行為
以下の行為は、接待とは評価されないとされています。
- 注文を受けて飲食物を提供しその場を離れること
- お酌をしてすぐその場を離れること
- 社交儀礼上の挨拶や短い世間話
- 不特定の客の歌に対する拍手
一般的な飲食店の接客では行われない行為が接待行為、というイメージですね。
よくある誤解
誤解①「カウンター越しなら接待にならない」
法的には誤りです。接待の該当性は客との物理的な位置関係によって決まるものではなく、特定の客に対して継続的に関与しているかどうかによって判断されます。2025年6月28日に摘発された歌舞伎町のガールズバーは、カウンター越しの談笑が接待と認定された実例であり、この誤解がいかに危険かを示しています。
誤解②「軽い会話程度なら問題ない」
社交儀礼上の挨拶や短い世間話は接待に該当しませんが、継続して談笑の相手となれば接待と評価されます。判断の分かれ目は「継続性」にあり、一言二言の応答と特定の客との長時間の会話は、法的にまったく異なる評価を受けます。
誤解③「今まで問題がなかったから大丈夫」
2025年6月の改正風営法施行により、取締りの方針は明確に転換しています。従来黙認されていた営業形態が現在は厳格に取り締まられており、「これまで摘発されなかった」という事実は、今後の合法性を何ら保証するものではありません。
まとめ
深夜酒類提供飲食店営業の届出と風俗営業1号許可は、接待行為の有無と深夜営業の要否によって適用が分かれる制度です。両者は原則として併用できず、いずれを選択するかによって営業内容に本質的な制約が生じます。
自店舗の運営が接待に該当するかどうか判断が難しい場合、その曖昧な状態のまま営業を継続することが最もリスクの高い選択です。2025年改正後の罰則水準を踏まえれば、開業前の段階で専門家に相談し、適切な手続きを選択することが不可欠です。
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