キャバクラやパチンコ店などの風俗営業を開始するには、都道府県公安委員会による風俗営業許可が必要です。許可審査は大きく「場所的要件」「構造的要件」「人的要件」の三つに分かれますが、なかでも人的要件は、申請の断念や先送りにつながるケースが最も多い要件です。
本コラムでは、風営法第4条第1項に定める欠格事由を中心に、実務上の注意点と2025年改正の内容を整理します。
人的要件の法的位置づけ
風営法第4条第1項は、「公安委員会は、風俗営業の許可の申請があった場合において、申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない」として、13の欠格事由を列挙しています。
この規定は羈束規定、すなわち欠格事由に該当する場合には公安委員会に裁量の余地がなく、許可を拒否しなければならない規定です。許可後に欠格事由が判明した場合は取消事由にもなります(同法第26条)。
審査の対象となる人物の範囲は以下のとおりです。
法人申請:法人の役員全員および選任予定の管理者
個人申請:申請者本人および選任予定の管理者
主要な欠格事由
(1)未成年者(第1号)
2022年4月の民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられたため、18歳未満の者は原則として申請できません。
ただし、未成年者が風俗営業者の相続人であり、その法定代理人が欠格事由に該当しない場合は、第1号の欠格から除外されます。
(2)破産者で復権を得ていない者(第2号)
破産手続開始決定を受けた事実そのものが問題なのではなく、復権を得ているかどうかが基準です。復権とは、免責許可決定の確定等により法的な資格制限が解除されることを指します。
確認方法としては、本籍地の市区町村が発行する身分証明書(破産・禁治産等の有無を証明するもの)を取得して事前に確認しておくことが実務上の定石です。
(3)刑罰歴(第3号)
実務上、最もトラブルが生じやすい欠格事由です。条文は以下の二段構造になっています。
(A)罪名を問わず、1年以上の拘禁刑
いかなる罪であっても、1年以上の拘禁刑(懲役・禁錮・拘禁刑)に処せられ、その執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者は欠格となります。
(B)特定の罪による1年未満の拘禁刑または罰金
対象となる罪種は風営法が限定列挙しており、主なものは以下のとおりです。
- 風営法違反
- わいせつ・賭博・人身売買に関する罪
- 売春防止法違反
- 児童福祉法・職業安定法・出入国管理及び難民認定法(入管法)・労働者派遣法・技能実習法違反 等
すべての罰金が欠格事由になるわけではありません。 たとえば、交通違反など、列挙されていない罪による罰金は、それ単体では(B)の欠格事由には該当しません。
5年の起算点について
起算点は「執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日」です。具体的には以下のように解釈されます。
| ケース | 起算点 |
|---|---|
| 拘禁刑(実刑) | 釈放された日 |
| 拘禁刑(執行猶予) | 執行猶予が満了した日 |
| 罰金 | 罰金を納付した日 |
判決日や事件の発生日ではないため、起算点を誤ると5年経過の判断が狂います。記憶に頼らず、判決書や納付記録等の客観的資料で確認することが不可欠です。
(4)暴力団関係者(第4号・第5号、および2025年改正による第13号)
条文上「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者」とされており、現役の暴力団員が該当することは当然として、実務上問題になりやすいのは以下の点です。
- 元構成員:条文上、離脱からの経過年数についての明文規定はありませんが、実務上は相当期間の経過と関係断絶の実態が審査されます
- 名義貸し・実質支配:書面上の役員でなくても、資金提供・指示命令・利益帰属等の実質的関与が認められれば問題となります
また、2025年改正で追加された第13号により、暴力的不法行為等を行うおそれのある者が、出資・融資・取引等を通じて当該事業活動に支配的な影響力を有する者も欠格事由に加わりました。
(5)過去の許可取消し(第6号)
風俗営業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者は欠格となります。申請する都道府県にかかわらず、取消し歴があれば適用されます。
(6)心身の故障(第11号)
「心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者」が欠格とされています。通院歴の有無のみで判断されるものではなく、営業の管理・統制が困難な状態にあるかが実質的な基準です。
2025年11月28日施行の改正による追加欠格事由
2025年改正では、法人格や組織形態を変更することによる処分逃れを防ぐ観点から、欠格事由が大幅に拡充されました。
第7号:密接関係法人の取消し歴
申請法人に取消し歴がない場合であっても、親会社・子会社・兄弟会社など、株式保有・資金・人事・取引関係を通じて事業に実質的な支配または重要な影響を及ぼす「密接な関係を有する法人」が過去5年以内に許可を取り消されている場合、申請法人も欠格に該当します。
第8号:処分回避目的の許可証返納
立入調査の実施後または聴聞期日の公示後に許可証を返納した場合、その返納日から5年を経過していない者は欠格となります。
第9号・第10号:合併・分割による処分逃れ
聴聞期日公示後または立入後に合併によって消滅した法人、あるいは分割によって事業を承継させた法人も欠格の対象となります。さらに、公示日または立入日の60日前以内に当該法人の役員であった者も、同様に欠格事由に該当します。
実務への影響
これらの改正により、「都道府県を変えて申請する」「法人を新設する」「代表者だけを差し替える」といった対応では、許可取得が困難になりました。警察の審査においては、資金の出所・指示命令系統・利益の帰属・旧関係者の関与の有無まで説明が求められます。
また、法人申請の添付書類として、警察庁通達により以下の書類が新たに必要となっています。
- 第7号・第13号に該当しない旨の誓約書
- 密接関係法人の名称等を記載した書面
- 株主名簿の写し(申請者が株式会社の場合)
4. 法人申請における役員の範囲(第12号)
法人で申請する場合、役員のうち一人でも第1号から第6号または第8号から第10号のいずれかに該当すれば、法人として許可を受けることができません。
注意すべきは「役員」の解釈です。登記簿上の取締役のみを指すのではなく、実質的に経営・業務執行に関与する相談役・顧問なども、審査の場では役員と同等に扱われる可能性があります。名目的なポジションであっても実態を伴う関与があれば対象となり得るため、法人申請にあたっては関係者全員について欠格事由の有無を確認する必要があります。
実務上のチェックポイント
人的要件の審査でつまずくケースは、主に以下の三点に集約されます。
① 刑罰歴の起算点の誤認
記憶に基づく「6年前だから大丈夫」という判断は危険です。罰金の納付日・執行猶予満了日を客観的資料で特定し、対象罪種かどうかも含めて確認してください。
② 役員範囲の過小評価
登記簿記載の取締役のみを確認すれば足りるわけではありません。実態として経営に関与する全員が審査対象です。
③ グループ法人の取消し歴の見落とし
2025年改正の影響で、申請法人だけでなく密接関係法人の経歴も問われます。グループ全体での事前精査が不可欠です。
まとめ
風俗営業許可の審査において、人的要件は店舗の設備や立地と並ぶ重要な審査項目であり、欠格事由への該当が判明した時点で許可は下されません。見落としや誤認が生じやすい点として、今回は以下の三点を重点的に解説しました。
①刑罰歴の起算点は、判決日や事件発生日ではなく「執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日」です。罰金であれば納付完了日、執行猶予であれば猶予期間の満了日が起算点となります。記憶に頼った判断は誤りを招きやすく、客観的な資料による確認が不可欠です。
②役員の範囲は、登記簿上の取締役に限りません。実質的に経営・業務執行に関与する相談役や顧問なども審査対象となり得るため、法人申請では関係者全員について欠格事由の有無を精査する必要があります。
③グループ法人への波及は、2025年11月28日施行の改正によって新たに加わったリスクです。申請法人に問題がなくても、密接な関係を有する法人が過去5年以内に許可を取り消されていれば欠格となります。グループ全体での事前確認が求められます。
これらの確認は、物件や内装の検討に着手する前に済ませておくことが原則です。欠格事由が後から発覚した場合、申請時期の延期や体制の抜本的な組み替えが必要となり、物件契約後では損失が生じかねません。
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